50歳を過ぎてピアノを始め、ピアニストでも難しいとされるリストの「ラ・カンパネラ」を弾けるようになった佐賀市のノリ漁師、徳永義昭さん(60)が4月、北九州市の舞台で演奏を披露した。挑戦のきっかけになった著名ピアニスト、フジコ・ヘミングさんからコンサートの前座に招かれ、約6分間の難曲を弾ききった。
4月16日夕、北九州市小倉北区の北九州ソレイユホール。これまで何度も舞台でピアノを披露してきた徳永さんだが、観客は最も多くて約300人。この日は約1700人もの観客を前に、「失神するのではないか」と思うぐらい緊張しながら舞台そでを出た。
大舞台でただ1人、ピアノの前に座ると鍵盤に手をそえた。170センチ、92キロ。ノリ漁師らしい太い指が、高速で左右に動く。
演奏を終えて一礼すると、大拍手に包まれた。盛り上げたい気質に火がつき、両手を上げてピースサインを作り笑いもとった。「ミスが多かった。観客はそこも受け入れて拍手してくれた」。そう話すと、ほっとした表情を浮かべた。
コンサートの後、フジコさんにお礼を言うと演奏をほめられ、「また九州に来た時には呼ぶから弾いて」と声をかけられたという。
徳永さんがピアノを始めたのは2012年の春。ノリ漁期が終わる春から秋にかけてはパチンコばかりの日々だった。初めて2カ月で70万円も負け込んだ。妻千恵子さん(59)の財布に手を付けようとしてきつく怒られたこともあった。
もうパチンコはやめよう――…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル